新製品・新技術の開発や研究にお金をかけた会社は、その費用の一定割合を法人税額から直接差し引ける——これが「試験研究費の税額控除」(研究開発税制)です。「研究開発なんてうちには関係ない」と思われがちですが、製品の改良・試作、新サービスの開発なども対象になり得ます。制度は大きく3つ。それぞれの対象と控除率を、わかりやすく整理します。
【結論】研究開発にかけた費用の一定割合を、法人税から直接差し引ける
・制度は3つ:①一般型/②中小企業技術基盤強化税制/③オープンイノベーション型
・中小企業は ①と②の「有利な方」を選択(同じ年に両方は使えません)
・③は①②とは別枠で、上乗せして使えます
・いずれも「税額控除」——計算した法人税そのものから直接マイナスできます
試験研究費の税額控除(研究開発税制)とは
青色申告をしている法人が、その事業年度に試験研究費(研究開発の費用)を支出した場合に、その額に一定の割合を掛けた金額を、法人税額から控除できる制度です。経費として利益を減らす「所得控除」ではなく「税額控除」——つまり計算された法人税そのものから直接差し引けるため、節税効果が大きいのが特徴です。制度は次の3つに分かれています。
3つの制度の早見表
| 制度 | 対象 | 控除率(目安) | 控除上限 |
|---|---|---|---|
| ① 一般型 (一般試験研究費) | すべての青色申告法人 | 約8.5%〜14% | 法人税額の25% |
| ② 中小企業技術基盤強化税制 | 中小企業者等 | 12%〜17% | 法人税額の25% |
| ③ オープンイノベーション型 (特別試験研究費) | 大学・国の機関等との共同/委託研究 | 20%・25%・30% | 法人税額の10% (①②とは別枠) |
※控除率は、試験研究費の増え方(増減試験研究費割合)や売上に対する割合などの要件を満たすほど高くなります。上限の範囲内で、より多く控除できるしくみです。
① 一般型(一般試験研究費の税額控除)
もっとも基本となる制度で、青色申告をしているすべての法人(大企業も中小企業も)が対象です。その年の試験研究費の額に、おおむね8.5%〜14%の控除率を掛けた金額を法人税額から控除できます。控除率は、前年までと比べて試験研究費がどれだけ増えたかなどに応じて上下します。控除できるのは、その年の法人税額の25%までが上限です。
② 中小企業技術基盤強化税制
中小企業者等(原則として資本金1億円以下の法人など)のための制度で、①の一般型よりも基本の控除率が高いのが特徴です。控除率は12%からで、要件を満たせば最大17%まで上がります。上限は同じく法人税額の25%です。
中小企業は「①か②の有利な方」を選択
①一般型と②中小企業技術基盤強化税制は、同じ事業年度に両方は使えません(どちらか一方を選択)。中小企業は基本の控除率が高い②の方が有利になることが多いですが、試験研究費の増え方によっては①が有利になる場合もあります。毎年、有利な方を判定して選ぶことが大切です。
③ オープンイノベーション型(特別試験研究費の税額控除)
大学や国の研究機関、他社などと共同で行う研究・委託する研究(特別試験研究費)を対象にした制度です。相手先に応じて控除率が決まっており、国の研究機関・大学等との共同/委託研究は30%、一定のベンチャー企業等との研究は25%、その他は20%と、一般型・中小型より高めに設定されています。
この③は、①②とは別枠で、上限は法人税額の10%。①または②とあわせて上乗せ適用できるのが大きなポイントです(ただし、同じ費用を重複して控除することはできません)。
対象になる「試験研究費」とは
製品の製造、技術の改良・考案・発明などのための試験研究にかかった費用が対象です。たとえば次のようなものが含まれます。
- 原材料費・経費 試作や実験のための原材料費、研究に使った設備の費用など。
- 研究者の人件費 専門的な知識をもって研究に専ら従事する人の人件費。
- 委託研究費 外部に委託した試験研究の費用など。
- 新サービスの開発費用 大量のデータの分析による新しい役務(サービス)の開発にかかる費用なども対象になり得ます。
※製品の売上原価など、通常の製造・販売にかかる費用は対象外です。「どこまでが試験研究費か」の線引きには専門的な判断が必要です。
注意点
- 青色申告が必要 いずれの制度も、青色申告書を提出している法人が対象です。
- 明細書の添付が必須 適用を受けるには、確定申告書に控除額や試験研究費の額を記載し、計算明細書を添付する必要があります。
- 費用を正しく区分・集計すること 対象となる試験研究費を、日ごろの経理できちんと区分・集計しておくことが、控除額を最大化するカギです。
研究開発税制の活用は、当事務所にご相談ください
研究開発税制は、「どの費用が試験研究費にあたるか」「①と②どちらが有利か」「③を上乗せできるか」の判断で、控除額が大きく変わります。当事務所では、御社の費用の内容を確認し、使える控除を取りこぼさないようご提案します。賃上げ促進税制のコラム(こちらも法人税から直接控除でき、研究開発税制と併用できます)や法人税率のコラムもあわせてご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。試験研究費の範囲・控除率・控除上限・上乗せ措置の要件は、法人の区分や個別の事情、最新の制度改正により異なります。実際の適用にあたっては、当事務所または国税庁(タックスアンサーNo.5442・5443・5444ほか)の情報をご確認ください。