前回の居住用賃貸建物と消費税のコラムで、令和2年改正により居住用賃貸建物の取得時の消費税は原則として仕入税額控除ができないとご説明しました。では、その控除できなかった消費税は、法人税・所得税の計算ではどう扱うのでしょうか。今回は「控除対象外消費税額等」としての取扱いを、買取再販業者様の視点も交えて解説します。
控除できなかった消費税は「控除対象外消費税額等」になる
税抜経理方式を採用している場合、支払った消費税は「仮払消費税」として本体価格と分けて計上します。このうち仕入税額控除できなかった部分が、期末に精算しきれずに残ります。これが「控除対象外消費税額等」です。
居住用賃貸建物では、取得時の建物分の消費税が丸ごと控除できないため、その金額がそのまま控除対象外消費税額等になります。これを法人税(個人事業なら所得税)の計算上、どう費用にしていくかがポイントです。
税込経理方式なら表面化しません
控除対象外消費税額等は、税抜経理方式に特有の論点です。税込経理方式では、消費税が本体価格に含まれて処理されるため、この金額が独立して出てくることはありません(その分、建物の取得価額や仕入原価が大きくなります)。控除対象外消費税額等の一般論はこちらのコラムもご覧ください。
①【買取再販】棚卸資産に係る場合 → 全額その年の損金
買取再販業者様が転売目的で保有する建物は「棚卸資産」です。棚卸資産に係る控除対象外消費税額等は、繰延べの対象から除かれており、その事業年度の損金として全額を経費にできます。
つまり、仕入税額控除はできないものの、法人税の計算上は、その控除対象外消費税額等を仕入年度にまとめて費用計上できることになります(下記②の資産のように5年に分けて償却する必要はありません)。
②【賃貸目的で固定資産保有】の場合 → 繰延消費税額等
一方、その建物を賃貸物件として固定資産で保有する場合は、資産に係る控除対象外消費税額等として、次のように扱います。
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次のいずれかに当てはまれば、その年に全額損金
・その資産にかかる控除対象外消費税額等が20万円未満である
・課税売上割合が80%以上である - 上記に当てはまらない場合(繰延消費税額等) 「繰延消費税額等」として資産に計上し、60か月(5年)で均等償却して損金にしていきます(取得した事業年度は、その2分の1が上限)。または、建物の取得価額に算入して減価償却で費用化する方法もあります。
居住用賃貸建物は「課税売上割合80%以上」で救われにくい
居住用賃貸建物を持つ事業者は、非課税の家賃収入が大きいことが多く、課税売上割合が80%以上にならないケースが多くあります。その場合、②の資産分は一度に経費にできず、5年かけて少しずつ費用化することになります。買取再販(棚卸資産)とは、費用化のスピードが大きく異なる点に注意が必要です。
③ あとで消費税を「取り戻した」ときの連動調整
前回のコラムのとおり、居住用賃貸建物を第三年度の課税期間の末日までに売却・課税転用すると、消費税側で仕入税額控除の一部を取り戻す(加算調整する)ことができます。この取り戻しが起きると、法人税・所得税側でも調整が必要になります。
取り戻した分は、控除対象外消費税額等ではなくなる
消費税の調整で仕入税額控除が戻ってくると、「当初は控除できなかった」という前提が一部くつがえります。そのため、すでに損金(または繰延・取得価額)として処理した控除対象外消費税額等のうち、取り戻された部分に対応する金額を、その調整を行う事業年度で益金に算入する(または資産計上額から減額する)など、法人税側でも整合させる処理が必要です。消費税と法人税の両面を通しで管理することが欠かせません。
消費税と法人税をまとめて設計します
居住用賃貸建物は、消費税(仕入税額控除の制限と調整)と法人税(控除対象外消費税額等の費用化)が複雑に絡み合う分野です。当事務所では、仕入から売却までの一連の流れを通して、消費税・法人税の両面から最も有利になる処理をご提案します。第1回の仕入税額控除の制限のコラムもあわせてご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。控除対象外消費税額等の取扱いや、消費税調整に伴う法人税上の処理は、棚卸資産・固定資産の別や個別の事実関係により異なります。実際の申告にあたっては、当事務所または国税庁の情報をご確認ください。