買取専門店・リユースショップ・中古車販売(車屋)を営む法人にとって、インボイス制度で最も心配なのが——「一般のお客様(消費者)から買い取った商品は、インボイス(適格請求書)をもらえないから、仕入税額控除ができないのでは?」という点ではないでしょうか。結論からいうと、「古物商等特例」により、一定の帳簿を保存するだけで、これまでどおり仕入税額控除が認められます。本コラムで、その仕組みと実務のポイントを整理します。
インボイス制度の原則
インボイス制度(適格請求書等保存方式)では、原則として「帳簿」+「請求書等(インボイス)」の両方の保存が、仕入税額控除の要件とされています(消法30⑦)。売り手が発行するインボイスがないと、原則として仕入れにかかった消費税を差し引けません。
でも、消費者からの買取りはインボイスがもらえない
買取店・リユース・車屋の仕入れは、その多くが一般のお客様(消費者)や免税事業者からの買取りです。これらの方は適格請求書発行事業者ではないため、インボイスを発行できません。原則どおりなら「仕入税額控除ができない=消費税の負担が増える」ことになってしまいます。
【解決】古物商等特例 ― 帳簿の保存だけで仕入税額控除OK
そこで用意されているのが「古物商等特例」です。古物営業法の許可を受けた古物商が、適格請求書発行事業者でない者から古物(自社で販売する棚卸資産に該当するものに限る)を買い受けた場合には、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で、仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一ハ)。
中古車販売(車屋)、リユースショップ、各種買取専門店は、まさにこの特例の対象です。インボイスがもらえない相手からの仕入れでも、帳簿さえきちんと保存すれば、控除額が目減りしません。
- ① 古物営業法の許可を受けた古物商であること いわゆる「古物商許可」を受けて営業していることが前提です。
- ② 買い取った古物が「棚卸資産」であること 自社が事業として販売する商品(転売用の在庫)として買い取ったものに限ります。自社で使う備品などは対象外です。
- ③ 相手が適格請求書発行事業者でない者であること 一般消費者や免税事業者からの買取りが対象です。(インボイスを発行できない相手だからこそ、この特例が使えます。)
相手が「課税事業者(適格請求書発行事業者)」の場合は通常どおり
買取りの相手が適格請求書発行事業者(課税事業者)である場合は、この特例ではなく、原則どおりインボイスの交付を受けて保存する必要があります。相手が消費者・免税事業者か、課税事業者かで扱いが分かれる点にご注意ください。
帳簿には何を書けばよいか
「一定の事項を記載した帳簿」とは、通常の帳簿の記載事項に加えて、この特例の対象である旨を記録したものです。
-
通常の記載事項
・相手方の氏名または名称
・取引年月日
・取引の内容(商品名など)
・対価の額 - 加えて記載する事項 この特例の対象である旨(例:「古物商特例」等)を記載します。
相手方の「住所」は古物台帳で管理されるため、消費税の帳簿では省略できます
古物商は、古物営業法によって取引の相手方の情報(古物台帳等)を管理する義務があります。そのため、消費税の帳簿には相手方の住所の記載までは求められず、氏名等の記載で足りる取扱いとされています。既存の古物台帳の運用を活かせるため、実務の負担は大きくありません。
注意しておきたいポイント
- 「棚卸資産」に限られる 転売用の在庫として買い取ったものが対象です。自社で使う車両・備品などの購入は、この特例の対象外です。
- 免税購入品と知りながらの仕入れは控除不可 免税店(輸出物品販売場)で消費税が免除された物品(免税購入品)だと知りながら買い取った場合は、令和6年4月1日以後、古物商特例の適用の有無にかかわらず、仕入税額控除ができません。
- 準古物も対象に含まれる 古物営業と同等の取引方法で買い受ける「準古物」も、原則としてこの特例の対象に含まれます。
同じ特例が使える、その他の業種(参考)
「インボイスの交付を受けることが困難」として、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れは、古物商のほかにもあります。
| 業種 | 対象(棚卸資産に該当するものに限る) |
|---|---|
| 質屋 | 適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得 |
| 宅地建物取引業者 | 適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入 |
| 特定金属くず買受業(届出事業者) | 特定金属くずの購入(令和8年9月1日以後の取引) |
| 再生資源卸売業など | 再生資源・再生部品の購入(上記の特定金属くずを除く) |
建物の買取り(宅建業者)については、居住用賃貸建物と消費税のコラムもあわせてご覧ください。
買取・リユース・車屋の消費税は当事務所へ
古物商等特例は、帳簿の記載方法や「棚卸資産か否か」「相手が課税事業者か否か」の判断がポイントになります。当事務所では、買取専門店・リユース小売・中古車販売業の消費税・記帳を、インボイス対応まで含めてサポートします。インボイス制度のコラムや記帳指導・記帳代行のページもご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。古物商等特例の要件や帳簿の記載事項は、個別の状況や最新の制度改正により異なる場合があります。実際の適用にあたっては、当事務所または国税庁「インボイス制度に関するQ&A」をご確認ください。