不動産取得税は、不動産を取得したら必ず課税されるわけではありません。相続で引き継いだ場合や、価格が一定額に満たない場合など、そもそも税がかからないケースがあります。一方で、相続は非課税でも、贈与や特定遺贈は課税されるなど、線引きを間違えやすい論点でもあります。本コラムでは、非課税となるケース・免税点・特例で結果的にゼロになる場合を、令和8年度改正の免税点引き上げも踏まえて整理します。(税額を軽くする軽減措置そのものは、別コラムで解説予定です。)
「かからないケース」の全体像
不動産取得税は、有償か無償か、登記をしたかどうかを問わず、不動産を取得した事実に対して都道府県が課す税です。原則は課税で、かからないのは例外です。その例外は、大きく次の3つに整理できます。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| ① 非課税 | 相続・共有物分割・公共用など、課税されない取得 |
| ② 免税点未満 | 課税標準額が免税点に満たない、少額の取得 |
| ③ 特例で結果ゼロ | 課税標準の特例で控除した結果、税額が生じない取得 |
① 形式的な所有権移転による非課税
地方税法73条の7は、実質的に新たな取得とはいえない形式的な所有権の移転を非課税としています。代表的なものは次のとおりです。
| 取得の態様 | 取扱い |
|---|---|
| 相続(包括遺贈・相続人への遺贈) | 非課税 |
| 法人の合併・一定の分割による取得 | 非課税 |
| 共有物の分割(持分の範囲内) | 非課税 |
| 一定の信託財産の移転 | 非課税 |
| 国・地方公共団体などの取得 | 非課税 |
| 土地区画整理による換地/公共に開放された私道 | 非課税 |
なお、法人の分割で非課税となるには、法人税法の適格組織再編の要件の一つである「金銭等不交付要件」(対価として承継法人株式以外の金銭等が株主に交付されないこと)を満たす必要がある場合があります。
【最重要】相続は非課税、贈与・特定遺贈は課税
最も間違えやすいのが、取得の原因による違いです。同じように無償で不動産を得ても、相続なら非課税、贈与なら課税です。遺贈も、相続人が受けるものや包括遺贈は非課税ですが、相続人以外の人が特定の不動産を受ける「特定遺贈」は課税されます。
| 取得の原因 | 課税・非課税 |
|---|---|
| 相続・包括遺贈・相続人への遺贈 | 非課税 |
| 相続人以外への特定遺贈 | 課税 |
| 贈与による取得 | 課税 |
なぜ相続は非課税で、贈与は課税なのか
相続は、本人の意思とは無関係に、財産だけでなく負債(借金など)も引き継ぐものです。この点に配慮して、税務上、不動産取得税は非課税とされています。一方、贈与や相続人以外への特定遺贈は「自らの意思で無償取得した」ものと整理されるため、課税されます。相続税対策で行う生前贈与も、不動産取得税はかかる点に注意が必要です。
また、共有物の分割は、分割前の持分割合に応じた部分までは非課税ですが、その持分を超えて取得した部分は課税されます。相続で取得した不動産の相続税については相続税の基礎控除のコラムもあわせてご確認ください。
用途などによる非課税
取得する主体や用途による非課税もあります。国・都道府県・市区町村などが取得する場合は非課税です。また、宗教法人が本来の用途に使う境内建物・境内地、学校法人が直接教育に使う不動産、社会福祉法人の一定の施設なども、その用途に供する限りで非課税とされています。
「本来の用途に使うこと」が前提です
用途による非課税は、実際にその用途に使うことが前提です。目的外の用途で使えば、課税されることがあります。取得後の使い方にも注意しましょう。
② 免税点未満なら課税されない
課税標準となるべき額が免税点に満たない場合、不動産取得税は課税されません(地方税法73条の15の2)。この免税点は、令和8年度税制改正で昭和48年以来はじめて引き上げられ、令和8年4月1日以後に取得したものから新しい金額が適用されています。
| 取得の区分 | 現行(R8.4.1以後) | 改正前 |
|---|---|---|
| 土地 | 16万円未満 | 10万円未満 |
| 家屋(建築による取得) | 66万円未満 | 23万円未満 |
| 家屋(売買などその他) | 34万円未満 | 12万円未満 |
免税点は「課税標準額」で判定します(購入価格ではない)
免税点は、購入価格そのものではなく、不動産取得税の課税標準となる金額(原則として固定資産税評価額)で判定します。また、土地を取得した人が1年以内に隣接する土地を取得した場合や、家屋を取得した人が1年以内に一構となる家屋を取得した場合は、前後の取得を合わせて一つの取得とみなして免税点を判定します。小分けにして免税点未満に見せることはできません。
③ 課税標準の特例で、結果的にゼロになる場合
非課税や免税点に当たらなくても、課税標準の特例で課税標準額が下がり、結果的に税額が生じないことがあります。
- 新築住宅の控除 課税標準から1戸につき1,200万円(認定長期優良住宅は1,300万円)を控除できます。
- 宅地評価土地の特例 宅地評価の土地は、価格の2分の1が課税標準になります。
これらの控除後の額が免税点未満になれば、やはり課税されません。軽減の詳しい計算方法は、別途「不動産取得税の軽減措置」のコラムで解説します。
間違えやすいポイント・実務の落とし穴
- 相続=非課税/贈与・特定遺贈=課税 無償でも取得原因で結論が真逆になります。生前贈与は課税される点に注意。
- 登記をしなくても課税される 不動産取得税は「取得の事実」に課されます。登記の有無は関係ありません。
- 非課税でも「申告」が必要なことがある 非課税・軽減に当たる場合でも、都道府県税事務所への申告を求められることがあります。
非課税・軽減を受けるための手続
免税点未満や相続による取得など、非課税に当たる場合でも、取得後に「不動産取得税非課税申告書」の提出を求められることがあります。
提出先・期限の目安
・提出先:不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所
・期限:原則として取得後60日以内と定める自治体が多いです
・添付書類は不動産の内容によって異なるため、管轄の都道府県税事務所へ事前に確認しましょう。
不動産の取得・相続の税務はご相談ください
不動産取得税は、取得原因や用途、免税点の判定を誤ると、思わぬ課税・手続漏れにつながります。当事務所は、宅地建物取引士の資格を持ち自らも不動産業に携わる税理士として、取得から相続まで一貫してサポートします。不動産の税務のページや相続税申告のページもあわせてご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。免税点の金額や非課税の要件、申告手続は、取得時期や自治体により異なる場合があります。実際の判断にあたっては、当事務所または不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所にご確認ください。