相続税は、亡くなった人(被相続人)が残したプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産(債務)も考慮して計算します。相続財産から債務を差し引くことを「債務控除」といい、これを正しく行うことで相続税の負担を適正に抑えることができます。控除の対象となる債務を具体的に整理します。
債務控除とは
債務控除とは、相続財産の合計額から、被相続人が残した債務を差し引ける制度です。相続税は「プラスの財産 − マイナスの債務」に対してかかるため、債務を漏れなく計上することが、適正な申告につながります。
相続税の控除対象となる債務
債務控除の対象となるのは、亡くなった人の債務のうち、相続開始時点で存在が確実であると認められるものです。具体的な例は、以下のとおりです。
- 銀行などの金融機関からの借入金
- その他個人などからの借入金
- 亡くなった後に支払う所得税、住民税、固定資産税などの公租公課
- 病院に対する未払医療費
- 水光熱費、電話代などの公共料金等の未払金(亡くなった人が使用していた期間に限る)
- 賃貸不動産の借主から預かっている敷金
- 買掛金などの事業上の未払金
これらは、被相続人が本来支払うべきだった債務であり、相続人が引き継ぐことになるため、相続財産から差し引けます。以下、いくつかの項目を詳しく見ていきます。
銀行などの金融機関からの借入金
銀行をはじめとした金融機関からの借入金は、相続が開始された時点での確実な債務であるため、債務控除の対象となります。遺産の総額から差し引くことができるのは、被相続人が亡くなった時点における借入金の残高と未払の利息部分です。
また、被相続人が連帯債務者となっていた場合も債務控除の対象となります。連帯債務とは、同一の債務に対して複数人の債務者のそれぞれがすべてを弁済する義務を負うことです。
所得税・消費税(準確定申告)
被相続人が亡くなったときに納めていない所得税がある場合、相続人は相続が発生した日の翌日から4ヶ月以内に「準確定申告」をして所得税を納めなければなりません。また、被相続人が消費税の課税事業者であった場合、準確定申告で消費税も納める必要があります。
所得税や消費税を納めるのは準確定申告をした相続人ですが、これらの税金は本来であれば被相続人が納めるべきものであるため、納税額に相当する金額を遺産の総額から控除できます。
ただし、相続人の責任で準確定申告の手続きが遅れたことで発生した延滞税や加算税については、債務控除の対象になりません。
債務控除の対象にならないもの(注意点)
一方で、次のようなものは債務控除の対象になりません。混同しやすいので注意が必要です。
- 墓地・仏壇・仏具などの未払金:これらは相続税の非課税財産であり、それにかかる債務も控除できません。
- 団体信用生命保険付きの住宅ローン:被相続人の死亡により保険金でローンが完済されるため、返済義務が残らず、債務控除の対象になりません。
- 保証債務:原則として対象外です(主たる債務者が弁済不能で、求償しても返済を受けられないなど、一定の場合を除きます)。
- 相続手続きの費用:遺言執行費用や相続登記の費用など、相続開始後に発生した費用は、被相続人の債務ではないため対象外です。
葬式費用は「債務」ではありませんが、控除できます
お通夜や葬儀にかかった費用は、被相続人の債務ではありませんが、債務控除とは別枠で相続財産から差し引くことが認められています。詳しくは葬儀費用の債務控除のコラムもご覧ください。
債務控除ができる人にも要件があります
債務控除を受けられるのは、原則として相続や遺贈で財産を取得した相続人・包括受遺者です。相続放棄をした人は、原則として債務控除を受けられません。誰がどの債務を負担するかによっても取扱いが変わるため、注意が必要です。
相続税申告は債務の把握が大切です
債務控除は、対象となる債務を漏れなく拾い、証拠資料を整えることで効果が高まります。当事務所では、財産・債務の把握から評価、相続税申告まで一貫してサポートします。詳しくは相続税申告のページもご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。債務控除の対象や範囲は、個別の状況により異なります。詳しくは当事務所または国税庁の情報をご確認ください。