土地や建物を売って利益(譲渡所得)が出たとき、その税率は所有していた期間の長さで大きく変わります。「長期譲渡所得」なら約20%、「短期譲渡所得」なら約39%——同じ利益でも、税率が約2倍違うのです。さらに、相続や贈与で取得した不動産は、所有期間の数え方に特別なルールがあります。売却のタイミングを誤ると税負担が跳ね上がるため、仕組みを整理します。

長期譲渡と短期譲渡で、税率はこれだけ違う

土地・建物の譲渡所得は、所有期間が5年を超えるか(長期)/5年以下か(短期)で区分され、それぞれ次の税率(分離課税)が適用されます。

区分所有期間税率(所得税+住民税)
長期譲渡所得5年20.315%(所得税15%+復興0.315%+住民税5%)
短期譲渡所得5年以下39.63%(所得税30%+復興0.63%+住民税9%)

たとえば譲渡所得が1,000万円なら、長期なら約203万円、短期なら約396万円。差は約193万円にもなります。「あと少し待てば長期だった」というのは、実際によくある話です。

【最重要の落とし穴】判定は「譲渡した年の1月1日」で数える

ここが一番の注意点です。所有期間の5年は、実際に売った日ではなく、「売った年の1月1日」時点で判定します。

「5年超えたはず」なのに短期になる例

令和3年3月に取得した土地を、令和8年5月に売ったとします。実際の保有期間は約5年2か月ですが、判定は令和8年1月1日時点で行うため、そのときの所有期間は約4年10か月=5年以下。つまり短期譲渡(39.63%)になってしまいます。
もし売却を翌年(令和9年)にすれば、令和9年1月1日時点で5年超となり長期譲渡(20.315%)数か月の売却時期の違いで、税率が倍近く変わるのです。

相続・贈与で取得した不動産は「取得日を引き継ぐ」

では、相続や贈与でもらった不動産は、いつから数えるのでしょうか。「相続した日」から数えると、多くが短期になってしまいそうですが——そうではありません。

相続・贈与(個人からの通常の贈与)で取得した資産は、原則として亡くなった方(被相続人)や贈与した方(贈与者)が取得した日を引き継いで、所有期間を数えます(所得税法60条)。取得費(買ったときの値段)も同じく引き継ぎます。

相続直後に売っても「長期」になることが多い

たとえば、親が20年前に購入した土地を相続し、相続した年に売ったとします。所有期間は「相続の日から」ではなく「親が20年前に取得した日から」数えるため、長期譲渡(20.315%)に該当します。相続してすぐの売却でも、被相続人が長く持っていれば長期になる——これは知っておくと安心なルールです。

ただし、引き継がない例外もあります

次のような場合は、取得日・取得費を引き継がず、その時の時価で取得したものとして扱われます。
限定承認による相続・包括遺贈
負担付贈与
法人からの贈与など
通常の相続・贈与では引き継ぎますが、こうしたケースでは判定が変わるため、個別の確認が必要です。

取得費が分からないときは注意

相続・贈与では取得費も引き継ぎますが、古い不動産だと「いくらで買ったか分からない」ことがあります。その場合は、売却代金の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使えますが、取得費が小さくなる分、譲渡所得(=税額)が大きくなりがちです。購入時の売買契約書などの資料は、できるだけ探して保管しておくことが大切です。

不動産の売却は「売る前」のご相談で税額が変わります

長期・短期の判定、相続・贈与での取得日の引き継ぎ、各種特別控除の活用(相続した空き家の3,000万円控除など)は、売却の前に設計しておくことで、税負担が大きく変わります。当事務所は、宅地建物取引士の資格を持ち自ら不動産業にも携わる税理士として、相続と不動産の両面から最適な売却をご提案します。不動産の税務のページ相続税申告のページもご覧ください。

不動産の売却・譲渡所得を無料で相談する →

※本記事は一般的な解説です。土地・建物の譲渡(分離課税)を前提としており、税率・所有期間の判定や取得日の引き継ぎは個別の事情により異なります。詳しくは当事務所または国税庁(タックスアンサーNo.3202・No.3208ほか)の情報をご確認ください。

← コラム一覧へ