海外赴任中に、日本に残したマイホームや投資用不動産を売却する——このとき、「日本を離れているから日本の税金は関係ない」と思っていませんか。実は、海外勤務中(非居住者)の方が日本国内の不動産を売却した場合も、その売却益は日本で課税され、確定申告が必要です。しかも、買主が代金の一部を源泉徴収するなど、国内に住んでいる場合とは違う手続きがあります。ポイントを整理します。

海外勤務の方は「非居住者」になります

所得税では、海外の支店などに1年以上の予定で勤務する人や、海外で1年以上生活すると見込まれる人は「非居住者」に該当します。海外赴任中の方の多くが、この非居住者に当たります。

非居住者でも、日本の不動産の売却益は日本で課税される

非居住者であっても、日本国内にある不動産の売却益(譲渡所得)は「国内源泉所得」として日本で課税されます。したがって、日本で確定申告をして納税する必要があります。税率は、原則として国内に住む方(居住者)と同じで、所有期間により長期(20.315%)・短期(39.63%)に分かれます(長期・短期の譲渡税率のコラム参照)。

【重要】買主が代金の10.21%を源泉徴収する

非居住者ならではの大きな特徴が、源泉徴収です。非居住者から国内の不動産を購入した買主(代金を支払う側)は、売買代金の10.21%を源泉徴収して、税務署に納付する義務があります。つまり、売主である非居住者は、売買代金から10.21%が差し引かれた金額を受け取ることになります。

源泉徴収が免除される3つの条件

手元に入る資金が減ってしまう源泉徴収ですが、すべての取引に無条件で適用されるわけではありません。次の3つをすべて満たす取引は、例外として源泉徴収の対象外となり、売買代金の全額をそのまま受け取ることができます。

  • ① 買主が「個人」であること 不動産会社などの法人が買主の場合は対象外です(源泉徴収が必要)。
  • ② 買主が、自分自身またはその親族の「居住用」として購入すること 賃貸に出すなど、居住用以外の目的での購入は対象外です。
  • ③ 不動産の売買価格が1億円以下であること 1億円を超える場合は、源泉徴収が必要です。

一般的なマイホームやファミリー向けマンションの売却であれば、買主が「自分が住むために買う個人(実需層)」となるケースが多いため、この免除に当てはまることも少なくありません。

売却活動の段階から、不動産会社とすり合わせを

ご自身の取引がこの免除要件に当てはまりそうかは、売却活動の段階から不動産会社としっかりすり合わせておくことが大切です。買主がどのような方か(個人か法人か・居住用か投資用か)で、手元に入る金額が変わってきます。

出国前に「納税管理人」を定めておく

非居住者は、日本国内での確定申告や納税の手続きを代理してもらう「納税管理人」を定め、税務署に届け出る必要があります。納税管理人には、日本国内に住む親族や、税理士を選ぶのが一般的です。出国前に決めておくと、その後の手続きがスムーズです。

確定申告で精算する

源泉徴収された10.21%は、あくまで税金の「前払い」です。最終的には、譲渡所得を確定申告して精算します。実際の税額が源泉徴収額より少なければ還付され、多ければ追加で納付します。取得費や譲渡費用、各種特例を反映して正しく申告することで、払い過ぎを取り戻せる場合もあります。

居住用財産の特例(3,000万円控除など)は使える?

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除などの特例は、居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡するなどの要件を満たせば、適用できる場合があります。ただし、非居住者の場合は適用の判断が複雑で、要件を満たすかどうかで結論が大きく変わります。売却の前に、必ず個別にご確認ください。

海外からの不動産売却も、オンラインでサポートします

非居住者の不動産売却は、源泉徴収・納税管理人・確定申告・特例判定と、通常の売却にはない手続きが重なります。段取りを誤ると、払い過ぎや手続き漏れにつながります。当事務所は、宅地建物取引士の資格を持ち自ら不動産業にも携わる税理士として、海外にお住まいの方にもオンラインで対応し、納税管理人の就任から申告まで一貫してサポートします。不動産の税務のページもご覧ください。

非居住者の不動産売却を無料で相談する →

※本記事は一般的な解説です。非居住者の課税関係・源泉徴収・特例の適用は、居住形態や租税条約など個別の事情により異なります。実際の売却・申告にあたっては、当事務所または国税庁(タックスアンサーNo.1932ほか)の情報をご確認ください。

← コラム一覧へ