「まだ現役で会社の役員を続けているのに、年金が思ったより少ない」——その原因が、役員報酬にあるケースは少なくありません。年金を受け取りながら働くと、報酬の額によって年金の一部(または全部)が支給停止になる「在職老齢年金」という仕組みがあるためです。役員報酬との関係を整理します。

在職老齢年金とは

在職老齢年金とは、老齢厚生年金を受け取りながら、厚生年金保険に加入して働いている場合に、給与・報酬の額に応じて年金の一部または全部が支給停止となる仕組みです。会社の役員も、厚生年金に加入していれば対象になります。

ポイントは、減額されるのは「老齢厚生年金(報酬比例部分)」だけという点です。老齢基礎年金(国民年金部分)は、いくら働いても減額されません。

役員報酬が高いと、年金が減る

会社の役員報酬は、厚生年金の「標準報酬月額」のもとになります。そのため、役員報酬を高く設定するほど、在職老齢年金による年金の減額が大きくなります。これが、役員報酬と年金の最も重要な関係です。

減額されるかどうかは、次の2つの合計額で判定します。

減額判定に使う2つの金額

① 基本月額
老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額です。

② 総報酬月額相当額
その月の標準報酬月額(=役員報酬の水準)に、直近1年間の賞与を12で割った額を加えたものです。

減額の計算方法

①基本月額 + ②総報酬月額相当額 が、国の定める「支給停止調整額」を超えると、超えた分の2分の1が年金から支給停止されます。

計算例(基準額を62万円とした場合)

  • 前提 基本月額(年金)=15万円/総報酬月額相当額(役員報酬など)=55万円
  • 合計 15万円 + 55万円 = 70万円 → 基準額62万円を8万円超過
  • 支給停止額 超過分8万円 ÷ 2 = 4万円が毎月支給停止 → 受け取れる年金は月15万円 → 11万円に

このように、役員報酬を高くすると、その分だけ年金が削られてしまいます。極端に報酬が高い場合は、報酬比例部分の年金が全額支給停止になることもあります。

【令和8年(2026年)4月改正】基準額が引き上げられました

在職老齢年金の「支給停止調整額」は、令和8年4月から月51万円 → 月62万円へ引き上げられました。これにより、これまで年金が減額されていた方でも、減額されなくなる・減額幅が小さくなるケースが増えています。役員報酬と年金のバランスは、この新しい基準額をふまえて考える必要があります。

役員報酬の設定で考えるべきこと

オーナー社長の場合、役員報酬は自分で決められるからこそ、次のような視点でのバランスが大切です。

  • 役員報酬を下げれば年金は満額に近づくが、会社の損金や、ご自身の生活資金とのバランスを考える必要がある
  • 役員報酬を下げると、社会保険料・所得税は下がる一方、将来受け取る年金額(報酬比例部分)にも影響する
  • 役員報酬・配当・退職金など、お金の受け取り方全体で最適化を考えることが重要

役員報酬の最適な設計はご相談ください

役員報酬は、法人税・所得税・社会保険料、そして年金までを含めて総合的に考えることで、手元に残る金額が大きく変わります。当事務所では、在職老齢年金もふまえた役員報酬の設計をご提案します。詳しくは税務顧問・税務相談のページもご覧ください。

※本記事は一般的な解説です。年金額の計算や社会保険の具体的な取扱いは、個別の状況により異なります。金額の詳細は、日本年金機構・年金事務所または専門家にご確認ください。

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