個人事業が軌道に乗ってくると、「法人成り(法人化)」を検討する方が増えます。法人成りには様々なメリットがありますが、その代表的な一つが「給与所得控除が使えるようになる」ことです。これは、個人事業のままでは得られない大きな節税効果につながります。
個人事業主には「給与所得控除」がない
個人事業主の所得は、事業所得=売上 − 必要経費で計算します。ここで差し引けるのは、実際に支払った経費だけです。事業主自身への「給与」という考え方はなく、利益がそのまま事業主の所得として課税されます。
法人成りすると「給与所得控除」が使える
法人成りをして、会社から自分に役員報酬(給与)を支払うと、その報酬は個人側では「給与所得」になります。給与所得には、給与所得控除という控除が認められています。
給与所得控除は、いわば「実際にお金を使っていなくても、給与の額に応じて自動的に差し引ける“みなし経費”」です。会社員のスーツ代や必要経費の概算として設けられているもので、これが法人成りによって新たに使えるようになります。
給与所得控除とは(令和7年分以降)
給与収入の額に応じて、次のように控除額が決まります(主な区分)。
・給与収入 190万円以下 → 65万円(最低保障額。令和7年改正で55万円から引き上げ)
・360万円超〜660万円以下 → 収入 × 20% + 44万円
・850万円超 → 195万円(上限)
イメージ(役員報酬 600万円の場合)
- 給与所得控除の額 600万円 × 20% + 44万円 = 約164万円を、経費のように差し引けます。
- 個人事業のままだったら 同じ利益でも、この164万円分の控除はありません。法人成りによって、新たに生まれた控除です。
所得を「分散」できるのもメリット
法人成りをすると、利益を「会社の所得(法人税)」と「役員報酬(個人の所得税)」に分けられます。所得税は所得が高いほど税率が上がる累進課税のため、一人に集中させるより分散させたほうが、全体の税負担を抑えられる場合があります。さらに、ご家族に働いてもらい役員報酬を分ければ、それぞれに給与所得控除が使え、分散効果はより大きくなります。
ただし、法人成りは総合的な判断が必要です
給与所得控除は大きなメリットですが、法人成りには社会保険への加入義務、赤字でもかかる法人住民税の均等割、設立・運営のコストなどの負担も伴います。「利益がいくらを超えたら法人成りが有利か」は、事業の状況によって変わります。目先の一つのメリットだけでなく、全体を見て判断することが大切です。
法人成りのご相談はお気軽に
当事務所では、法人成りのタイミングの見極めから、役員報酬の設定、設立手続き、開業後の税務まで一貫してサポートします。詳しくは会社設立・起業・法人化支援のページもご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。給与所得控除の金額や法人成りの有利判定は、個別の状況により異なります。詳しくは当事務所または国税庁の情報をご確認ください。